森林公園、都市公園を
「健康」という視点で見直す
クアパーク

「健康」という視点で公園をデザインする

日常に歩くことを取り入れ、楽しみながら健康増進を目指すクアオルト健康ウオーキングですが、歩くことを習慣にするためには、歩くための環境づくりも大切な要素となります。
まち全体が公園のようになっているドイツのクアオルトはもちろん、パリのシャンゼリゼ通りなど、世界には、ただ歩くだけで楽しくて、歩くために訪れたくなるようなまちや通りが多数あります。
健康という視点で環境を整備したドイツのクアオルトのようなまちづくりがいま注目されつつあります。

クアパーク(保養公園)

ドイツのクアオルトは公的医療保険が適用される地域です。専門医や医療機関の他、様々な施設が必要になります。
滞在中に様々な人が楽しめるクアハウス(保養交流施設)やテルメ(温泉施設)、温泉が飲めるトリンクハレ(飲泉所)などがあり、そんな中に滞在する人々や地域に居住する人々が散策して楽しむクアパーク(保養公園)があります。
「健康」という視点で整備されたクアパークは、素足で歩くことができ、足うらを刺激する砂利道や童心に返って歩く泥の道、冷水を活用した水の道など様々な道があり、公園内のいたるところにストレッチができる遊具などが点在します。
クアオルト的視点で既存の施設や地域資源を見つめ直したとき、当たり前にある自然が宝の山に見えてきます。
地域資源を生かし、クアオルト健康ウオーキングの導入を核に、住民の健康寿命の延伸を後押しするとともに、マイクロツーリズム(三密を避けて近場で気軽に行ける旅の形)や交流人口の拡大を図ることができます。
そのためには社会環境の整備が重要な要素となります。

❶クアパーク(保養公園) ❷クアハウス(保養交流施設)❸病院、クリニック、研究所、その他は宿泊施設と住宅 ❹温泉施設・多目的療法館

事例をもとに日本の良さを生かしクアパークを設計

先進地ドイツの事例をもとに日本の良さを生かしながら、世界に誇れるような「歩いて楽しく健康になるまち」をつくるとしたら、どんな景色が見えてくるのでしょう?研究所では、クアオルトの考え方に賛同していただいているスペシャリストと共にクアパークの設計にも注力しています。

堀越 英嗣

堀越英嗣ARCHITECT5代表 建築家、芝浦工業大学 教授

1978年東京藝術大学大学院修士課程を修了、丹下健三・都市・建築設計研究所に勤務。主任建築家として、赤坂プリンスホテル、兵庫県立歴史博物館、愛媛県民文化会館、横浜美術館、パリ・イタリー広場基本計画、シンガポール・マリーナサウス再開発計画、ナポリ新都心計画等 国内外の多くのプロジェクトに参画。東京都新都庁舎競技設計一等当選案を担当後、同研究所退社。86年アーキテクトファイブを設立、共同主宰・代表建築家に。2001年鳥取環境大学教授、2004年芝浦工業大学教授、2005年株式会社堀越英嗣 ARCHITECT 5を設立。
【主な作品】モエレ沼公園 ガラスのピラミッド他(イサム・ノグチと共同) 、鳥取フラワーパーク とっとり花回廊、新潟駅南口駅舎接続施設および駅前広場、旧SMEソニー・ミュージックエンタテインメント白金台オフィス、セルリアンタワー金田中、IRONY SPACE等
【主な著書・論文】くうねるところにすむところ 子どもたちに伝えたい家の本 家のいごこち、断面パースで読む 住居の居心地(編著)、ARCHITECT 5(共著)、アーキテクトファイブ 建築ジャーナル別冊(共著)、藤井厚二の体感温度を考慮した建築気候設計の理論と住宅デザイン(共著)、戦前の日本における先端設備としての床暖房・パネルヒーティングの住宅への導入(共著)

上田裕文

北海道大学准教授

東京⼤学⼤学院農学生命科学研究科森林科学専攻修了。ドイツ学術交流会(DAAD)奨学⽣としてカッセル⼤学建築・都市計画・景観計画学部、都市・地域社会学科で経済社会科学博⼠(Dr.rer.pol.)を取得。札幌市⽴⼤学講師を経て北海道大学准教授。専⾨は風景計画。先進地ドイツで学んだ樹木層の日本らしい在り方を提言している。近年は、日本造園学会の有志等で構成される「明治神宮とランドスケープ研究会」のメンバーとしても活躍。2021年7月11日に開催予定の、明治神宮国際神道文化研究所主催のシンポジウム「第二章MORI×MAGOKORO」において、『林苑計画書』から読み解く森の未来~「明治神宮とランドスケープ研究会とともに」~に登壇。
【主な著書】『「林苑計画書」から読み解く明治神宮一〇〇年の森』(共編著、東京都公園協会、2020年)、『地域創生デザイン論:今日“まち育て”に大学力をどう活かすか(共著、分眞堂、2020年)
『実践 風景計画学―読み取り・目標像・実施管理―』(共著、朝倉書店、2019年)、『こんな樹木葬で眠りたい』(単著、旬報社、2018年)、『明治神宮以前・以後: 近代神社をめぐる環境形成の構造転換』(共著、鹿島出版会、2015年)
『Basic and Clinical Environmental Approaches in Landscape Planning』(Co-author, Springer, 2014)
『Landschaften: Theorie, Praxis und Internationale Bezüge』(Co-author, Oceano Verlag Schwerin e.K., 2013)
『The Image of the Forest: Four Case Studies in German and Japanese Rural Communities』(Single Author, Südwestdeutsche Verlag für Hochschulschriften, 2009)

日本のクアオルトが目指すまちづくりに盛り込むべき要素、「クアオルトが描く風景」について話してもらいました。